「【en】−演− 9」
【en】シリーズ 2014年版 劉備編
諸葛亮×劉備(合作水魚)


 ちゅ、と音が立ち、唇を離したと思えば耳を咥えた。痛くはない程度の力で耳殻、耳朶を噛み、尖った舌先が耳孔に挿し込まれる。秘奥を拡げる指は忙しなく抜き差しされ、耳孔にある舌先も律動を同じくして挿抽した。
「ふ、はぁ……ちょ、こ、ぅめ……え……ひ、耳……は、やめ……ろ、と」
 激しい口付けから解放されたと思えば、苦手な耳への愛撫だ。制止の声を上げるがぞわぞわと這い上がる感触に身悶えるだけで言葉にならない。
 その間も、孔明の手は脇腹を撫でたり胸の尖りを摘み、潰し、と這い回る。そのくせあれほど触れていた私の欲塊には一切触れてこなくなった。
 もどかしい、と焦燥が身を包む。
「…本当はお好きなくせに。感じすぎるのがお嫌なのでしょう?」
 結合の真似事をしていた舌を一旦抜き、囁く。それでも唇は耳から離れないので、それもまた私にとっては十分すぎる刺激だ。
 秘奥に差し込まれた指が増え、中に潜んでいる法悦の元をなぞられる。指が引くときは秘奥のもっとも薄く弱い皮膚になっている際をほぐすように拡げていく。まるで具合を確かめられているようだ。
「あっ……ん、あほ、ぉ。知っている、なら……ぁあ」
 辛うじて文句は付けるが、秘奥から与えられる抗えない快感と、間断なく施される全身への愛撫に声音は濡れそぼり、喘ぎ混じりで力はない。
 しかし、変わらず私の欲塊に直接触れてくることはない。
 あぁ……じれったい、早く――
 次第に、私の頭は快感だけを追いかけるようになる。
 体は快感に喜びその都度跳ね、前に触れられないもどかしさに腰がうねって浮いたり沈んだりを繰り返す。
「あ、はっ……孔明っ」
 もう、触れてくれ、決定的な快感をくれ、と焦れて孔明の腕を掴む。どれだけの媚態と声を孔明に晒しているのか、気に掛ける余裕は残っていなかった。
「知っているからこそですよ…」
 歪む視界の中で孔明が笑みを深めた。掴んだ腕を取り上げられ、口元へ運ばれる。生温かいものが指に触れ、ぬるり、とした感触で舐められていると分かった。
「そのように腰を撓らせて、まるで陸に打ち上げられた魚のようですね」
 秘奥を拓く指がさらに増え、てんでバラバラに動かしたあと、指はあっさりと引き抜かれた。
「水が恋しいですか?」
「んん、ぁあっ……、ひ、ぁ」
 耐え切れず高く嬌声を上げる。勢い良く抜かれた指に息は整わない。
 こちらが煽った末だという自覚はあるから、この無体に文句をつける気は毛頭ない。試すような問いかけも、私とてしたからおあいことする。
 ただ、散々に焦らされて切羽詰っている。
 早く欲しいのだ、まったく。
 非難を込めて軽く睨む。
「……っお前という、奴は……ほん、とうに!」
 孔明の髪を腹立ちまぎれに乱暴に掻き混ぜて、後頭部を抑え込んで引き寄せる。
 口付け、すぐに離して言い切る。
「っは……。水を恋しがらぬ魚はおらん、阿呆」
 なにに対しても勤倹を貫く孔明の、唯一と言ってもいい欲深い想いに、これで満足か、と仄かに笑う。
「我が君」
 少しばかり照れ臭そうに笑って、孔明は合わせるだけの口付けを寄越した。
「お望み下さったもの、差し上げます」
 上半身を起こし、私の腰を自分の腰へと引き寄せ、腿の上に乗せた。両足は孔明の腰を挟むように広がる。再び香油を自分の雄身へと垂らした孔明は、ゆっくりと秘奥を押し広げてきた。
 今度は普段と同じ、私の様子を気遣いながらだ。腰に添えられた手のひらの熱がじわり、と皮膚を蕩けさせる。身を割る異物感を少しでも和らげようとしてか、すっかり先走りをだらしなくこぼしていた私の欲塊に手を添えた。先端から垂れていた先走りを塗り広げるように、指先がくるくると円を描く。
「……っん、く、ぁ……」
 秘奥を割る孔明の熱さと大きさに眉が自然と寄る。ただ苦痛だけではなく、ようやく求めていたものを与えられた満足感も大きかった。
「んん、あぁ……っ」
 それだけでも一杯一杯だったのに、前までいじられ、声を弾ませて背を反らす。その拍子に秘奥を締めて孔明の硬さを味わってしまう。
「…くっ… 」
 どうやら孔明も突然の締め付けに吐精感が競り上がったらしく、小さく呻き声を上げた。
 その声がまた色っぽくて、私は堪らなくなる。
「あ、っあ……、ん〜」
 感じ入った声が自然と上がる。狭くなった中を硬い雄身はじわりじわり、と押し進み、私の最奥で動きを止めた。
 上肢を孔明は倒し、髪を梳いてきた。
「…はぁ…、満たされた心地は…、どうですか?」
 埋まった私の中が心地良いのだろうか。艶っぽい吐息をこぼし、声をかけた。
 薄っすらと歪む視界で孔明を捕らえれば、快感を耐えるためか眉をひそめつつも、まだ余裕があるらしい。からかうように口元が歪んでいた。
 そのような、勝気で余裕ぶったところを見せられれば、私の負けん気とて刺激される。
「……足りない、な。もっとお前が欲しい。私の欲も底がないのだ、と言わなかったか?」
 本当はもう少しも余裕など残っていないのに、お前が欲しいぞ、と欲情をたっぷり両目に乗せて、小さく笑ってやった。
「…お聞きしました」
 今度は、いくぶんか素直な笑みを浮かべた孔明は、私の首の後ろへ手を伸ばし、唇を重ねる。反対側の手は腰に回り、抱き起こした。


 つづく


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