「【en】−演− 8」
【en】シリーズ 2014年版 劉備編
諸葛亮×劉備(合作水魚)


「お心を酌めず…、未熟な私をお許し下さい…」
「駄目だ……、はっ……許さんぞ?」
 絶えず送り込まれる直接的な快感に、腹の底は熱い。
 お前の作った酒も、お前の手から与えられる「これ」も、私をひたすら酔わせる。
 それでも、胸への愛撫が止んだせいで、孔明の自省する言葉へ返す余裕も生まれた。
「今度、一緒に少しばかり遠出をせんと、許さん」
「穴埋めをしろとおっしゃるのですか?」
 私の台詞に手が止まり、浮かべた揶揄するような笑いに片眉を跳ね上げた孔明は、同じようにどこか大げさで、少しばかり目を見開いて見せる。驚きを装いながら、膝を付いて身を起こした孔明は、香油の蓋を開けた。
 中から馴染んだ匂いとともに、孔明の手のひらに香油が流れる。
「出来ぬ、と言うなら良いのだ。私も一人は寂しいからな。今度出掛けるときは、誰かを連れて行くぞ?」
 欲を高ぶらせる手淫で熱く煮立っている腹の底だったが、孔明の動きを目で追い、与えられるであろう奥が疼き出す。
 早く欲しい、と切望する体を、少しでも年上の威厳と矜持を取り戻そうと、からかった笑みのまま、孔明の方寸をちくり、と刺激する。
「我が君は、時々、意地がお悪い。私の気持ちをご存知のはずなのに、そのように試されるのですから」
 そんな想いが通じているからこその駆け引きに、聡い孔明はすかさず乗り、拗ねたような顔を見せるから、可愛いな、と思わず「くっくっ」と小さく笑いがこぼれた。
 わざと作ったものであろうとも、童のような表情を私にだけ見せてくれる、それだけで嬉しくなるものだ。
 私が熱っぽく見つめているのが伝わるのか、まるで焦らすようにゆったりとした動作で手のひらに受けた香油を胸へと塗った。両手を使い、親指で尖りをくるくる、と淫蕩な仕草でなぞる。
 そうしてから、脇腹を撫で下ろして私の満足する答えをくれる。
「お供させていただきますとも。他の誰にもその役目、渡すわけにはまいりませんので」
「……ん、っ」
 滑りの良い香油にまみれた指や手で刺激されて、濡れた息を吐く。
「うむ、良い答えだ、嬉しいぞ」
「我が君」
 笑った私に、孔明も微笑み返す。
 なんとも、甘い雰囲気が私たちの間に流れるが、ですが、と続けた孔明の口元は、やや意地の悪そうな笑みへ形を変えた。
 失礼します、と小さな声で告げて、私の体勢をうつ伏せにすると、中途半端に脱げかけていた下穿きを引き下ろした。脱ぐのに協力しつつも、あらわにされてしまった尻に多少なりとも羞恥を覚える。
 だがそれも、後ろから覆い被さった孔明の体温を背中に感じるまでだ。
「その前に山となって居る書簡に目を通していただきますから、お覚悟を」
 耳を食み囁くものだから肩を竦め――竦めた肩が言葉の意味を理解した途端、びくり、と震えた。
「……孔明?」
 それは、漂った甘い空気の中にはとても似つかわしくない言葉で、恐る恐る、背中に感じる孔明の体温を振り返る。すでに私に笑顔はなく、引き攣っていた。
「我が君が寂しい思いをされることのないように、ずっとおそばでお供させていただきます」
 そんな驚愕に打ち震える(大げさではない、大げさではないぞ!)私に構わず、耳の後ろや首筋、震えた肩などに唇を寄せ、振り返った頬に口付けをした孔明は、体を離した。
 手早く下穿きを脱ぐと、その下からは育ち切った雄身が現れた。硬く天を向く雄身と手のひらに香油を垂らし、準備を整えている。
「それはあくまで最終手段であってだな……!」
 本来なら、互いに味わうであろう深い快感へ期待を募らせるところだが、聞き捨てならないことを耳にしてしまった以上、それどころではない。
 体が離れた隙を狙って、再び仰向けに戻った私は逃げるように寝台の端まで後ずさった。半身を起こし、雄々しい孔明の楔と、余裕そうに聞こえた声とは裏腹に、欲情を宿した強い目の光を素早く見て取る。
 そうだ、覚悟を決めて離れた私でさえ、これほどに欲しい、と飢えているのだ。私よりも若いこやつが平静なはずはない。もう限界に近いはずだ。
 なんとしても、執務のことはうやむやにしなくてはならん!
 と、固い決意の下、私は恥も忘れて男を煽る行動に出る。
「そんなことよりも、私は早くお前のそれが、こ、ここに、欲しい……のだ」
 言って、自分の指で孔明を受け入れる体の奥を広げ、誘う。
 もっとも、決意したわりには羞恥が勝り、ややしどろもどろで顔が熱かったのは、見逃してもらいたいところだ。
 そんな決死の努力が実ったのか、両目に宿った劣情は強さを増して、ごくり、と諸葛亮の咽が鳴り、上下したのが見えた。
「そのように煽ることばかりされて…。いいでしょう。それでは動くことが億劫になるほど、味わっていただきましょうか」
 言うなり、いきなり太腿を肩に担がれて、寝台へと再び沈む。
「っぅわ……!」
 驚いて声を上げ、無残に転ぶ。想像していたより効果があり怯むが、すでに後の祭りだ。
 噛み付くように唇を塞がれて、口内を愛撫、というよりは蹂躙に近い勢いで貪られる。
「……は、ぅん。ん、んんっ〜」
 加えて、香油に濡れた指は性急に秘奥を求め、窄まりをなぞって緩んだところを突き込まれた。普段は労わるようにことさら気遣うように中を拓くというのに、私の痴態がよほど孔明を刺激したらしい。
 塞がれた口の中で呻いた。


 つづく


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