「【en】−演− 7」
【en】シリーズ 2014年版 劉備編
諸葛亮×劉備(合作水魚)


「っ煽ったわけでは……っん、ふ……ない、からな」
 聞き捨てならない言葉に反論しようにも、私の弱点を知り尽くした孔明の指遣いに声は途切れる。感じ入った息が漏れるものの、何とか最後まで言いきり、あとは好きにしろ、と全身から力を抜いた。
「そうですね。我が君が、笑われたり、恥ずかしそうにされたり…、表情を変えられる。そのようなことで、私は煽られますから」
 簡単に煽られるのだ、と告白する孔明の言葉に嬉しさと照れを隠せない。
 下の唇や上の唇を代わる代わる吸い、食み、薄く開けた隙間からすかさず舌が滑り込む。胸の飾りを潰す指や、腰や尻を撫でる手など孔明の愛撫は巧みで、私を容易く追い詰める。
 腰などを擦られながら引き寄せられると、先ほどは夢うつつで不確かだった孔明の硬さが腿に当たった。今度はあきらかに故意だったようで、まるで硬さを――私は貴方を欲しているのです、と主張するかのように、擦り付けてきた。
「は、……んっ。ぅ、ふ……」
 目を瞑り、慈しみつつも悦を引きずり出そうとする若い男の愛撫に身を委ねた。押し付けられた孔明の熱と硬さに、もうこんなにも、と驚くが、私を欲してのことだ。かつその素直さが嬉しくて、私からも押し返して刺激を与えてやる。
 口腔では孔明の舌が上顎の凹凸や歯の根にいたるまで舌でなぞるものだから、馴染み深くも耐え難い気持ち良さに酔う。
 私が孔明の雄身を刺激したせいだろうか。咽が鳴り、派手な音を立てて唇が離れた。
 薄く目を開けば、再び男臭い、みなの前では決して見せることのないであろう笑みを浮かべた孔明が映った。
「…我が君…」
 我が君、と呼ぶ声に官能が掘り起こされる。堪らんな、敵わんな、と白旗を振りながら奥底から顔を出した官能を嘆息へと変える。
 私だけに見せる顔で、私だけに聞かせる声で、私を求めるのか、と自惚れていいのだろう?
「孔明……」
 目蓋や目尻、唇の端などに啄ばむ口付けが繰り返される。自分の欲望と私の欲望を高めるために、雄身は絶えず腿へと押し付け、擦ってくる。
 孔明、と呼び返した声は、熱を移されたように温度を上げていた。
 自分の上衣を脱ぎ捨てつつ、隙なく、私の衣の合わせ目から手で肌をなぞることもやめない。そのまま前あわせは肌蹴られ、孔明の眼下であらわになる。
 私の腿の先で熱と硬さを育てていく直接的な劣情の形と、久方ぶりの人肌に視界は揺れて官能が身を包む。
「独り寝は寂しゅうございました」
 口角を上げて笑みを艶やかにした孔明は、耳元へ唇を寄せて睦言を囁くと、耳の後ろを強く吸った。
「……んっ」
 苦手な耳への愛撫に肩がすぼまる。孔明は自分の雄身を押し付けるのをやめ、体をなぞっていた手を撫で下ろして私の欲塊の形を確かめてきた。下穿きの上からだったとはいえ、敏感なところへの刺激に声が跳ねる。
「あっ……ん」
 ゆるやかな、愛撫ともいえない愛撫だったが、すでに高ぶらされた体と久しぶりだった私にとっては十分な刺激で、もう片方の手も脇や胸を愛しそうにまさぐっているのだ。
 ああ……。私もすでに感じているな。
 孔明の指で自分の状態に確信を持つ。
「…もっと感じて下さい…」
 甘い誘惑を口にして、孔明は下穿きの帯も緩めて、生まれた隙間から手を忍ばせてきた。今度は確かめるような触れ方ではなく、感じさせ、育て上げるための施しだ。幹を擦り、先端は指先で掻き混ぜられる。
 首筋や鎖骨に唇は落ち、いじられたせいで膨らんでいる胸の先端へと口付けた。もう片方の尖りは指に摘まれ、押し込まれ、私にじんじんとした疼きを与えている。
「う……ふっ、ん……」
 自分の声とは信じがたい、濡れた喘ぎを孔明へ聞かせながら、頭や髪を撫でる。
「今度は……、ぁ。寂しくなる前に、来るんだぞ」
 独り寝が寂しい、などと言う前に、な。
 私はいつでも――思えば出会いの初めから、お前を待っていたのだ。
「はい…。我が君…」
 私の欲塊に熱を集める手はそのままに、胸から唇を離した孔明は口吻を寄せた。胸の尖りをいじっていた手は、香油が仕舞われている寝台の傍の物入れに伸びる。


 つづく


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