「極上の微笑 2」
 関羽×劉備


 働き者の弟たちによって、夕餉の時間はあっという間にやってきた。
「へへっ、うまそうだろ。今日は新鮮な魚が手に入ったらしくてな、俺が絶妙な焼き加減で焼いたんだぜ」
 嬉しそうに張飛は説明する。彼は夕餉の支度だけでなく、隣で食卓の用意までしていた。侍女たちがおろおろと止めようとするのも聞かず、大きな体に似合わず、細々と動いた。
 そもそもまだ兄弟で放浪をしていたときは、食事の支度は張飛の役目だった。
 劉備は目を細めて、弟の用意した食卓に顔を綻ばす。
「確かにおいしそうだ。頂くとするか」
 三人は食卓につき、湯気を立てている料理に箸をつける。
 そこへ、糜竺が顔を出した。
「お食事中に申し訳ございません。お探しの資料が見つかったので隣に置いておきました。明日、目を通しておいてください」
「わかった。……諸葛亮の姿が見えないが、どうした?」
 劉備が尋ねると、糜竺は苦笑いする。
「諸葛亮殿は、見つけた資料だけでは足りない、とおっしゃられ、直接調べてくる、と言って出かけていきました。すぐ済むと思いますが、夕餉には間に合わないので、殿に伝えておいてほしい、とのことです」
「本当に、あの者の働きぶりには頭が下がるな」
 劉備も苦笑いする。
 言伝を果たした糜竺は、自らも食事をとるために下がっていった。
「軍師になるのをあんなに嫌がっていた男とは、到底思えないな」
 魚を一匹平らげた張飛は、もう一匹に手をかける。
 劉備に仕えることを渋っていたときの諸葛亮を知っている張飛としては、それが不思議でならないようだ。
「あの者は妙に頑固なところがある。こうと決めればテコでも動かないが、一度腹を括れば、その頑固さは意志の固さに変わる。頼もしいかぎりなのだ」
 嬉々として諸葛亮のことを語る劉備だったが、少し表情を曇らす。
「しかし、夕餉に間に合わんのか。せっかく弟たちが揃ったというのに。諸葛亮にも共に混ざってもらいたかったのだが」
「兄者は諸葛亮殿と食事を?」
 関羽の問いに、劉備は頷く。
「時間が惜しいのだ。食事のときも相談しなくてはならないことが多くてな。もちろん、執務以外のことも話さないことはないが。今日はお前たちが来てくれたので、久しぶりに執政とは関係のない話をしたいと思っていたのだが」
 残念だ、と劉備は言った。
 そのあまりの落胆ぶりが、張飛にとってはおかしかったのだろう。
「本当に、兄者は諸葛亮、諸葛亮だな」

 諸葛亮が軍師として迎えられたときから、劉備はことあるごとに諸葛亮を頼りにしてきた。そのたびに、まだ諸葛亮の軍師としての力を認めていなかった張飛や関羽は、不信感も込め、劉備に聞いてきたことがあった。
「兄者は二言目には諸葛亮、だな。買い被りすぎなんじゃないのか?」
 しかし、劉備は至極真面目な顔で答えた。
「私にとって、諸葛亮は水だ。私は今、水を得た魚のようなのだ」
 確かに劉備に欠けていたものは、軍師、という知恵だった。その念願の知を手に入れることが出来て、喜んでいた。
 そのことは分かるらしいが、何が出来るかも分からない若造を、どうしてそこまで必要とするのか、二人は、その時は全く理解できないようだった。

 劉備は、今は張飛が諸葛亮のことを認め、わざと言っているのを知っているので、笑って受け止める。
「あの者は、私にとってなくてはならない存在だからな」
 劉備が言うと、張飛は肩を竦めた。
「まるで睦言みたいに聞こえるな。なあ、雲長兄者」
 張飛が関羽に振ると、なぜか関羽は妙な顔で小さく頷いただけだった。
 関羽の表情は読みにくい。顔の大半を覆う鬚のせいなのだが、長い時を過ごしてきた劉備と張飛には、どんな表情をしているかはすぐに分かる。
 その時の関羽は、今まで、あまり見たことのない表情だったので、劉備は張飛と顔を見合わせる。
「雲長、どうした?」
 劉備が聞くと、関羽は聞き返す。
「どうした、とは?」
「いや、何かお前の様子がおかしいような気がしたので」
 すると、関羽は笑みを浮かべ、首を横に振る。
「そんなことはありませぬ。気のせいですよ」
 そう言う関羽は、確かにいつも通りの弟で、劉備はそれ以上食い下がれなくなる。それでも、次兄の様子に、兄と弟は内心で首を捻っていた。
 しかし、その後は関羽も特に変わった様子も見せず、最近の近隣の豪族の動きや、市場で見つけた珍しい食べ物の話などをして、夕餉は何事もなく進んだので、関羽のおかしかった様子は忘れ去られた。
 すっかり寛ぎ、張飛の秘蔵の酒に舌鼓を打ちながら、久しい兄弟水入らずの楽しい一時を過ごしていると、廊下から足音が聞こえてきた。
「戻ってきたか」
 劉備が呟いて、廊下に声をかける。
「諸葛亮」
 足音が一瞬驚いたように止まり、すぐに動き出してから部屋の前で止まる。
「失礼します、殿」
 戸を開けて入ってきたのは諸葛亮だ。なぜか苦笑いを浮かべている。
「相変わらず鋭い神経をお持ちですね」
 劉備は、人の気配に敏感だ。耳もいい。足音だけでも、親しいものならすぐに聞き分けることができる。その神経の鋭さが、ここまで劉備を生き残らせたのかもしれない。
 姿も現さないうちから声を掛けられて、諸葛亮はだから苦笑したのだろう。
「調べものは済んだのか?」
「ええ。大丈夫です。明日には取り掛かれます」
「ならば、今日はもう休め。お前は昨日寝なかっただろう。忙しいのは分かっているが、少しは休まぬと体が持たないぞ」
「分かりました。お気遣い感謝いたします」
 礼をとる諸葛亮に、劉備は食卓に着くことを促す。
「すぐに食事を用意させる」
 しかし、諸葛亮はやんわりと断る。
「いえ、ご兄弟の邪魔をするのは忍びありません。私は別室でとらせていただきます」
「何を言う。共に食卓を囲みたくないのなら、誘わぬ。それに、お前は目を離すと食事しながらでも仕事をし兼ねん」
 諸葛亮の勤勉ぶりは、劉備にとっては心配の種でもある。有無を言わせず、食事を用意するように侍女に伝えてしまう。こうなれば、諸葛亮は否とは言えず、笑いながら食卓に着いた。
「諸葛亮、飲むか?」
 張飛が酒を勧める。少しだけ、と言い、諸葛亮は杯を受け取る。
「そうか、軍師殿はあまり酒を嗜まんのだったな」
「あまり強くないものですから」
 注がれた酒を舐めるように諸葛亮は飲む。その顔が驚く。
「これはおいしいですね」
「お、分かるか? 俺の秘蔵の酒だ。なかなか手に入らないらしい」
 一度心を許した相手には、すぐに人懐こくなる張飛は、諸葛亮とも屈託なく接する。それが相手にも伝わるのか、諸葛亮も笑みが零れる。
 それを劉備は眺めながら、嬉しく思っていた。
 自分の大好きな弟たちが、諸葛亮とうまくやっていけそうなので、一安心する。初めのうちは、険悪な雰囲気さえあったが、今は少しずつ信頼を深めていっているようだ。
 だが、その視線が関羽に向けられると、劉備の顔が曇る。
(雲長?)
 関羽は黙って杯を空けているが、どことはなしに不機嫌なように見える。ふと、忘れていた食事中の関羽の妙な顔を思い出す。
 あの顔と同じ顔を、前にも見た覚えがある。いつのことだったか。
 劉備は記憶を遡り、記憶の引き出しを片っ端から開ける。
(……あの時でもない。あれは違う。……あ)
 思い出した。だが、急に黙ってしまった主を不思議に思い、諸葛亮が声をかけた。
「殿? いかがされました?」
 その途端、思い出したはずの記憶は、またどこかへ仕舞われてしまった。
「いや、大丈夫だ。少し考え事をしていただけだ」
 少し恨めしく思いながらも、劉備は首を振った。
「軍師殿。さっきの兄者は何かを思い出しているときなのだ。そういう時は邪魔をしない方が良い」
 関羽が、ぼそりと口を挟む。
「そうだったのですか? それは大変失礼いたしました」
 謝る諸葛亮に、劉備は気にするな、と言う。
「大したことではない。そんなことが言わなくても分かるのは雲長と翼徳ぐらいだ。分からなくともおかしくはない」
「お三方は、互いのことを良く理解しておいでなのですね」
 感心する諸葛亮に、劉備は頷く。
「うむ、そうだな。本当に、いい弟達を持ったと思う。私の自慢だ」
「俺達だって、いい兄者を持ったと思ってるぜ」
 張飛が言う。そして、いつもなら関羽も同意するはずだったが、なぜか黙ったまま杯を呷(あお)った。
 やはり、どこか関羽はおかしかった。
 劉備は段々心配になってくる。先ほど思い出しかけた記憶も気になった。あそこにこの関羽のおかしな様子の答えがあるような気がしてならない。
 釈然としない気持ちのまま、その日の夕餉は終わり、夜も遅い、ということで、全員城に泊まることになった。四人はそれぞれの部屋へ引き上げた。



 夜。すでに城の人間は立ち番を残し、みな寝静まっている。
 劉備は関羽のおかしな様子の答えを思い出せず、寝台で眠れずにいた。こうなると、思い出すまで眠れなくなるので、思い切って散歩に出ることにする。
 隣室で待機している衛兵の目を盗み、明かりも持たずに部屋を抜け出す。
 この、放浪が長かった君主は、時々こうして一人で出かけては兵に怒られていた。
 中庭に出ると、月は半月を描いて、闇に慣れていた目には十分な明かりとなった。季節は夏を過ぎ、夜風が肌寒くなるころだった。
(上着を持ってくるのだったか)
 少し後悔しながら、中庭に設けられた大きな岩に腰掛ける。
 しかし、思い出せぬな。雲長のあの顔。確かにどこかで目にしたことがあるのだが。本人に聞いても答えぬだろうし、おそらく本人も自覚はしてなさそうだったしの。
 もう一度、記憶の引き出しを一段目から開けていく。徐々に遡り、まだ劉備が曹操の下に客将としていた頃まで遡った。
 劉備としてはあまり思い出したくない部分だったが、仕方がない。開けられてしまった引き出しは、中身をどんどん放ってくる。
(……あ、思い出した。あの時と同じではないか)
 やっと、答えに行き着き、劉備はすっきりする。と、同時に、状況の厄介さにも気付き、せっかくすっきりした思いも、少し沈む。
 問題は繊細で、拗れやすそうだった。
(うーむ、どうしたものか)
 腕を組み、唸るが、これと言って妙案が浮かぶわけでも無く、夜風の涼しさに身震いしてしまう。
 取り敢えず部屋に戻るとするか。
 諦めて、部屋に戻ろうと廊下に上がると、諸葛亮の部屋から明かりが漏れているのが見えた。
(まさかあの者。あれ程言ったのに、まだ仕事をしているのか?)
 こうなると放って置けなくなり、劉備は諸葛亮の部屋へ向かう。
「諸葛亮」
 劉備は、部屋の主の許可を取らず、問答無用で部屋に入る。
「殿!?」
 思っていた通り、卓上に向かって書き物をしていたらしい諸葛亮が、驚いて顔を上げた。
「お前、私があれほど言ったのにも関わらず、まさか、仕事をしていたのではあるまいな?」
「殿こそ、こんな時間に、まさかお一人で出歩いていらしたのではないでしょうね?」
 言い返され、思わず言葉に詰まる。一人で出歩くことに関しては、諸葛亮は酷く口うるさい。当たり前といえば当たり前なのだが、そのくせ、本人は一人であちこち歩き回るのが好き、という。
 劉備はお互い様なのでは、とも思うのだが、諸葛亮は、自分と殿は違うのですよ、と言って諭されてしまうのだ。
「いいではないか。城の中なのだし。それよりお前こそ。今日はもう休むように言ったはずだ」
 言い負かされないよう、劉備は諸葛亮を睨む。
 これまでの経験からして、劉備は未だに論戦で諸葛亮に勝った試しは無い。密かに悔しく思っていた劉備は、今日こそは負けまいと、気迫を漲らせる。
 そんな主の姿を見て、歳若き軍師は苦笑する。
「休みましたよ。それで、起きて仕事をしているのです」
 確かに、諸葛亮の姿は夜着だったし、髪もいつもより乱れているので、寝ていたのは間違いなさそうだ。しかし、この時間に起きている、ということは、ただの仮眠で、到底劉備の休め、という意味とはかけ離れている。
「しかしだな。これでは休んだことにはならぬ」
「殿ならお分かりでしょう。私には休む時間さえ惜しいのです。それに、解決しなくてはならない問題はまだまだ山積みなのも」
 やんわりと諭されて、劉備は眉を顰める。
 それは劉備も百も承知だった。今、執政は諸葛亮中心で回り始めている。そして、そのことがどれだけ諸葛亮の仕事を増やしているかも知っている。
 しかし、だからこそ諸葛亮が倒れたら困るのだ。それを心配して言っているのに、頑固なこの男は、一向に休もうとしない。
 もちろん、諸葛亮も劉備のそんな気遣いは分かっているようだが、だからと言って休むことは、自身に対する裏切りであり、何より、こんな若輩に懇願して軍師として迎えてくれた劉備に対して申し訳がない、と思っている節もあるようだ。
「しかし、私はお前が心配なのだ。その細い体にあまり蓄えがあるようにも思えぬし。軍師としてのお前だけを心配しているのではないのだぞ? お前、諸葛亮としての人も心配しておるのだ」
 真摯に語る主に、さすがの軍師も降参したようだ。劉備の説得は理屈ではないのだ。これ以上この人を困らせることはしたくない。そう思わせてしまう何かを持っているのだ。
「分かりました。休みます」
 諸葛亮の言葉に、劉備は顔を輝かせる。
「分かってくれたか。ならば、私が寝るのを見届けよう」
 その提案に、諸葛亮は目を丸くする。
「何をおっしゃいますか。そんなことなさらずとも、今度はしっかり休みますから」
「いや、お前のことだ。油断は出来ぬ。私が部屋から出た後で、また仕事を始めかねん」
 事実、似たような手で劉備の追求をごまかしたことがあったのだ。それを指摘された諸葛亮は、心苦しくなったようだ。
「信用してください。大丈夫ですから。殿こそ、しっかり休んでいただかないといけませんよ。私がここで休む分、明日の殿の仕事は倍になりますから」
 諸葛亮の遠まわしの脅迫に、劉備は嫌そうな顔になる。
「分かった。しっかり休め」
 結局、今回の論戦も最終的な軍配は諸葛亮に上がり、劉備は肩を落とす。
 しかし、本当は劉備に絆された諸葛亮が、いつも折れていることに、劉備は気付いていない。
「くしゅん」
 と、劉備は小さくくしゃみをした。
「殿、だいぶ夜は冷えてきています。お風邪を召されたらどうするおつもりです。そもそも、なぜそのような薄着で外を出歩かれるのですか」
 途端に、殊勝だった軍師は口うるさくなり、それでも、粗末ですが、と自分の上着を劉備に着せる。
「いや、少し考え事があってな」
 それで、劉備はなぜ自分が散歩をしていたかを思い出した。
「なあ、諸葛亮。お前、みなとうまくいっておるか?」
 長身の諸葛亮の上着は、劉備にとっては少し大きい。それを被りなおしながら、聞いてみる。
「突然、どうなされたのです?」
「いや、ちょっと聞いてみたくなってな」
 首を傾げ、その真意を図りかねた様子で、諸葛亮は答えた。
「ええ。糜竺殿は私の話をじっくり聞いてくれますし、趙雲殿や張飛殿も気遣って声をかけてくれます」
「雲長はどうだ?」
 劉備が一番気になっていることを聞く。それで、諸葛亮は質問の意味を悟ったらしい。
「関羽殿には、私はまだ信用はされていないようです。それも仕方のないことだと思っています。あの方は、一番貴方のことを考えておいでですから。新参者の私が、殿のお傍に近すぎて、気にかけておいでなのでしょう」
「やはり、か。いや、お前が気付いてそう考えておるなら、お前のほうはあまり心配してはおらぬ。ただ、な」
「関羽殿のほうですか?」
「まあ、そうだ。この問題は少し厄介でな。おそらく当分の間、お前は冷たく当たられると思う。だが、責任を持って私が解決をする。それまで辛抱をしてもらってよいか?」
「いえ、そんな。私は大丈夫ですので。あまり気になさらないでください。それに、これは私と関羽殿との問題ですし、あまり殿が気に病むことはありません」
「それが、そうでもなさそうなのだ。理由は聞かないでくれ。雲長はあれで妙に幼子のようなところがあるのでな。お前はお前らしく接しておいてくれ」
 もう一度、諸葛亮は首を傾げ、はあ、と曖昧に返事をした。劉備の意図が汲み取れず、素直に返事が出来ないらしいが、逆らう気もなさそうで、頷いてくれた。
「すまないな。これは明日返す」
 何も聞かずにいてくれる軍師に感謝して、諸葛亮の上着を摘まみ、諸葛亮の部屋を出る。
「殿、部屋までお送りします」
 諸葛亮がついてこようとするのを制止して、劉備は一人で部屋に戻るため、廊下を音を忍ばせて歩く。
 実は、この誰にも見つからずに戻る、と言う緊張感が劉備は好きだった。特に夜は静けさが増し、物音一つでも目立つ。それがますます緊張感を煽り、劉備を楽しませる。
 それを知れば、諸葛亮あたりは、困ったお人だ、とため息をつくだろう。
 だが、その夜はいつものように見つからずに戻るのは不可能だった。
「……っ?」
 廊下の影から伸びた腕に、劉備は捕らえられ、あっと思う間もなく部屋に引きずり込まれた。
 咄嗟に頭を過ぎったのは、賊か、ということだった。最近、曹操の手の者を頻繁に街郭で目撃されている報告を受けたばかりだった。
 そして、次に思ったのは、なぜこんな神経が研ぎ澄まされた状態の自分が、人の気配の気付けなかったのか、という驚きと悔恨だった。
 叫ぼうにも、口を手で塞がれている。暴れようにも、相手は相当の武芸の持ち主なのか、鍛えてあるはずの劉備が、少しも動けない。背中に当たる体格からしても、かなり大柄な賊のようだ。
(くっ、このようなところで朽ち果てるわけにはいかぬ! 臥龍も力を貸してくれることになり、ようやく天下への足がかりを得たというのに!)
 劉備の体が憤りに震える。
(やっと、雲長や翼徳、趙雲に日の目を見せてやれるというに!)
 劉備は心の中に憤りを吐き出す。自分の不甲斐なさに悔し涙が滲んだ。



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