「【en】−演− 11」 【en】シリーズ 2014年版 劉備編 諸葛亮×劉備(合作水魚) |
――とまあ、それが先日の顛末だ。 そのあとどうなったか、だと? ……。 好奇心が旺盛すぎるのは身を滅ぼす原因だ、とは誰の言葉だったか。 まあいい。 つまり、孔明と政務を離れたところで二人きりになりたい、と思って企てた計画は、あやつが糞真面目なせいで失敗に終わったわけだ。それでも、戻ってきたところで正直な気持ちは聞けたわけだし、成功といえば成功だ。 ……いや、そのあと、朝まで結局交じり合い、私は腰を痛めてしまったのだから、半分は失敗だったのか? ……いやいや、さらにそのあと、腰が治るまで、と甲斐甲斐しく世話をしてくれた孔明に、流れで政務をやらされたのだから、むしろ失敗だったのではないのか? うまく口車に乗せられたものだ。 この私が、執務を、真面目に、何日にも、渡って、やったのだぞ! ……言っていてちょっと色々と虚しくなったのでやめておく。 とにかく、ようやく互いに満足して朝を迎えたあと、孔明の奴は初めはバツの悪そうな顔をしていた。たぶん、私が腰を痛めるほど抱き潰した、と思って反省でもしていたのだろう。 まったく、そういうところが糞真面目だ、というのだ。私とて、良い、と言ったし嫌なら嫌だ、と言うのだから、いい加減分かれ。 とは言っても、私の腰が痛いのには変わりはない。声に出して呻いてしまえば、自分の歳も実感する。内心は孔明の気持ちを確かめられて嬉しかったのに、ついつい眉間に皺が寄った。 悔しい上に、政務をやらないと遠出に付き合わない、と孔明が言ったために焦り、ちょっとばかり大胆な誘い方なんぞしたことを思い出して、顔を熱くしたり、気が付けば孔明に腰が治るまで、などといつの間にか政務の準備をさせられて、「げえっ」と唸ったり、相当な百面相をしていたことだろう。 そんな私へ孔明はそれはもう甲斐甲斐しく世話をしたものだ。 ちょっと飽きた、と思えば茶を出して休憩にしましょう、と言い、小腹が空いたころには菓子まで出してくる。 もっとも、腰が痛む素振りを見せても、申し訳なさそうにはするが一切手を緩めんかったぞ。 「なぜこんなことになった」 と堪らず愚痴をこぼせば、片眉をひそめはするが、終始楽しそうだ。 なんだ、そんなに私に政務をさせたかったのか! 酒でも飲まなければやってられん、と途中で切れ気味に叫ぶと、仕方ありませんね、と飲みかけていた梅酒など出してきたので、少しは溜飲を下げた。 もちろん、政務に響くから、と大して飲ませてくれんかったのは言うまでもない。 そもそも、腰が痛くて動くのが億劫だった私は、政務がある程度片付くまでは、連日のように泊まり込みだ。朝から晩まで見張られているようなもので、息が詰まる! ……と言いたいところだが、しばらく孔明と離れていたし、政務という障害はあるものの、四六時中ともに居られるのだ。 悪くはない時間だった。 私の半ば当て付けのような我が侭も、楽しそうに孔明は叶えてくれたしなあ。 ただ、朝から晩まで傍にいるのだ。一晩中抱き合っただけでは足りなかった互いの欲求は募ってしまう。否が応でも欲しくなる。 とはいっても、腰痛は続いていたから、最後までやるのは不可能だ。なら、とばかりに孔明は私の一物を咥えようとしたものだから、全力で拒絶した。 口淫は、耳に不躾に触られるのと同じぐらい苦手だ。 「腰も痛いし、最後まではしないし、それもやめろ!」 と言い切ってしまったのだ。 となれば、あとは互いの手淫で、ということになり、これはこれでけっこう恥ずかしいものがあったな。 そんなこんなで、なんとか孔明が納得するところまで政務を片付けたので、ようやく本当の約束を果たすことになった。 あまり遠くへ行くことはやはり出来なかったので、二人で遠乗りだ。 遠乗りだけか、と初めは不満たらたらだった私だが、孔明が果実の多くなる場所を知っている、というので気が変わった。なにせそれをもいで、果実酒にしてくれる、というのだ。 むしろ私も手伝うぞ! と大いに張り切った。 実っている果物を指しては、どういう味の酒になるのだ、と聞けば、さすがは博識で、淀みなく答えてくれるその説明に熱心に頷く。そんな私を孔明は楽しそうに見ているし、私は私で、ようやく政務から解放され、孔明も連れ出すことができ、心置きなく楽しめた。 帰ったあとはどうしたか? それは決まっているだろう! 城の者や翼徳たちに配って、残りはすべて酒にするために孔明と―― なに、そのあと? そのあとは……訊くまでもないだろうが。 本当に、好奇心は身を滅ぼすぞ? もうこのぐらいで十分のはずだ。 さて、今度はどんな理由をつけて孔明を連れ出すか! おわり あとがき ここまでありがとうございました! (ほぼ)毎年恒例となってきました、「らら式」のさわらさんとの合作水魚、書いた当人たちが一番楽しんでいたとは思いますが、読んだ方も楽しんでいただけたのなら、何よりです。 今回も、うちの劉備はどこまでもお気楽能天気で、さわら孔明を困らせてばかりでしたが、劉備は劉備なりに考えあってのことなんだよ、ということが、さわら孔明相手だと伝わりやすいなあって思います。うちの孔明? いやあ、はははっ。 また機会があれば書きたい、とさわらさんと話していますので、のんびり気長に待っておいていただければ、お会いできると思います。そのときはまたどうぞよろしくです。 3月13日連載開始 4月18日連載完結 |
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